子猫のいる生活4
一章 2/3

ようやく、町に着いた時だった。

私の姿を見た、セネットさんが話しかけてきた。

「ラフィーナ…どうしちゃったんだい?」

「え…セネットさん!? わ。私急いで……るんです!!」

私は、息も絶え絶えに答えていた。

「…それは、悪かったね。でも、本当に大丈夫かい?」

そう云われて、私は大丈夫と答えようとしたが、
躓いて私はその場に崩れ落ちた。

激しく方が動いている。

身体が悲鳴を上げていて、これ以上走れそうになかった。

気づけばここまで、20分ちかくは小走りをしている。

体力の限界だった。

「セネ……ト…さん」

「ラフィーナちゃん?」

「おねがい……です、ヒューロ爺を……呼んで…」

「具合でも悪いのかい?」

心配した顔をされたがすぐに首を横に振った。

「……助けなきゃ……」

「え?」

「助けなきゃ!!  お願い、私は家に帰るから……お願い…」

私のただならぬ様子に、セネットさんもすぐに心強い返事をくれた。

私は、歩いたり走ったりを繰り返しながら、家に帰った。

きっとヒューロ爺が来るまでは時間があるだろう。

といっても、何をすればいいのかわからない。

こうでもないと行き来していた。

ちょっとでも、ヒューロ爺が来るまでに何かをしないといけないと思った。

そうだ。

きっと、お腹がすいてしまうだろう。

私は、クロムウェルさんから貰ったばかりの牛乳を手に取った。

そうだ、これであの子も喜ぶだろう。

元気がないときには、美味しい物を食べるに限るのだ。


 
 
 
ヒューロ爺が来てすぐに、診察を始めた。
 
その間に私はくべていた火を止めてセネットのおばさんと話をしていた。
 
大体の事情を説明し終割った後のことだった。
 
「……そうなの、大体事情が分かったわ。だから、このままじゃ駄目よ。
警防団があるんだから、そこに任せるのが一番なのよ」

「分かってる!! …駐在さんのところに
連れていかなきゃ行けないって、分かっているの…。でも…」
「…」
「あの子に云われたんです…助けてほしいって。
だから、私が何とかしなきゃいけないのよ!!」
 
「落ち着きなさい。
あなたがしなくちゃいけないことは何なのかを
もう一度よく考えなさい? 
こうして、引き留めておいて何になるの?」
 
セネットさんが云うことは正しい。
 
それは、私も分かっている。
 
私が、感情論だけで動いていて、
セネットさんの云うことは常識的でしかも理にかなっている。
 
それでも、私はそれを鵜呑みにすることができない。
 
なぜならあの子は、私と同じだからだ。
 
「それは…。でも、私は…見たんです。
あの子…腕に沢山傷があったんです。
私と同じなんです…。
あの子には、帰る家がないんです」
 
「……そうとは、限らないんじゃないかしら?」
 
「いいえ…私には、分かるんです。
だって…あんな傷あり得ないじゃないですか…」
 
「……えぇ、そうね……。そうよね…」
 
「…たしかに厳しい教育の家は沢山あると思いますけれども…
あんなになるまで、たたくなんてそんなのは家族じゃないわ!!」
 
「……」
 
セネットさんは、とても悲しそうな
そして憐れむような目で見つめていた。
 
その乾いた瞳を見詰めていると、
容易に彼女がなにを考え何を思っているのか想像がついた。
 
私を同情しているのだ。
 
同情されるのは心外だし、正直私はそのようにされる覚えはない。
 
しかし、はた目から見たらそのようにしか見えない境遇にあることは
いやというほどに体感していた。
 
だからこそ、セネットさんは何も云えないのだ。
 
理論的で正しいことを云われていて
私が説き伏せられるべきだとは分かっている。
 
それでも、私の感情がそれを許さない。
 
そんな身勝手なモノのために親切心を利用しようなどとは、
己のことながら反吐が出た。
 
けれども、今は手段など選んでいられなかった。
 
押し切るのなら…今しかない。
 
「お金の面は問題ありません。蓄えがいくつかあるんです……」
 
「…そうね。あなたにも、キチンとした家族ができるのね」
 
「セネットさん……」
 
その優しくも悲しい声が耳にまとわりついていた。
 
小さな声で私は謝罪の言葉を述べた。
 
そんな私にセネットさんは
 
「でも、承諾するには一つだけ条件があるわ。あの子を大切になさい。
 
あなたにとっての『家族』が素晴らしい物になるように。
あなたは、優しい子よ。
でも時に間違えることもあるわ。
 
あなたが今ここにいることを、バカだという人が沢山いるけれど
…私はそうは思わないわ。
 
そんなラフィーナちゃんだからこそ、黙認してあげる」
 
「セネット…さん…」
 
「でも、私が警防団には説明に行くわ。
いくら、仕事だからって彼らだって人情くらいあるわ…。
あそこにうちの小麦をひいきにしてくれる人がいるから、
これでも顔が利くのよ」

セネットさんはそう云ってくれた。

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