桜色交響曲4
第一章~桜~ 2/5

  それから一日、まったく身に心が入らないままでいた。

悩んでも仕方ないのに、すぐに考え込んだりして…。

気を抜くとすぐに、アレの事を考えていた。

でも、時間がたって考えてみると随分おちついてきた。
今は、昼休み美味しい弁当を変な考えで、

まずいものにはしたくない。


明るい事
を考えよう。

……なんだか。

…。

何考えてるんだよ、俺。
えっと……時に人間とは、時に現金なもので…

過去の苦い思い出も、後になっておもうと、

案外受け入れられたりして。

そう云う時には、ふと良い事のように

思えてしまうのだ。
だから、今俺の考えている事も決して変な事じゃないはずだ。

本当は、焼きそばパンと一緒に飲み込むはずだった言葉を

「あの子…可愛かったな」
なんて思わず口からもらしていて…。

ハッッと気付いた時はもう遅く…。

あの子とは誰だ?
と、激しく健吾やそのほか一緒にご飯を食べる

勇太だとか光輝だとかに、問いだされた。

たしかに、こう云う話はとてもとっつかれやすい。

けれども「実は、今朝出会った幽霊が可愛くて」

なんて、事は喩え変な噂が立とうとも、いえない。

むしろ、そんな事を云ってしまったら変な噂が立ってしまうかもしれない。

俺は、適当にお茶を濁しておいた。
 


そして、帰り道。

気が重い。

少しは冷静に考えられるようになったものの、

もう一度あそこを通るのは心苦しい。

けれども、残念な事にあそこを通らないと俺の家には帰れない。

まぁ、物凄い遠回りをするのならばいけるんだが…そこまではしたくない。
ていうか、さっきは大丈夫と思っておきながらやっぱりだめって、

どんなチキンなんだよ俺。あぁ、もういいや。

悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。

ええい、行ってやる!!
一歩。
また一歩。
慎重に出していく。

足が棒のようだ。

そして、あの桜の木の目の前にやってきた。

何故、覚えているのかと云うと。

それが並木の中で一番小さな桜だったからだ。

『やぁ、おかえり。拓也君』

やはり…。いた。
「……また、幻聴が……」
『げ、幻聴って…失礼だなぁ……。でも、ごめん』

「へ?」

びっくりして、変な声をだしてしまった。
だって、目の前に居るアレは突然謝ってきたからだ。

呪い殺されるんじゃないかとか、影で怯えていたりしたのに…。

謝られるなんて…思ってもいなかった。

でも、油断するな、俺。

きっと、アレは俺が油断するのを待っているに違いない。

いや、そうだ。

そうに決まっている。
『急に、幽霊に……名前なんて呼ばれたら…。

誰だって、怖いよね。……ごめん』

「いや…別に」
彼女のあっさりとしたいい方に、自然と返していた。

やばい、何してるんだよ。
『そっか、ならいいや。許してくれて、ありがと』

「あ、あぁ……」
今度は、ありがとう。だ。

目の前にいるアレは、俺の中で考えていた

「幽霊」のイメージとはかけはなれていた。

なんだか、可笑しくなりそうだ。
『なぁに? それとも、拓也君は綺麗な

黒髪の美人のおねいさんとかならいいってわけ?』 

「いや! そんなこといってねーし!!」

思わず突っ込んでしまった。
なんなんだよ! その、幽霊ってこんな感じ! 
っていう、ありふれた姿は…。
『ふふ、大丈夫。拓也君ならきっと色々な事受け入れられるよ』
「は、はぁ……。…ま、まさか……慰められるなんて……」
俺がそうかえすと、アレはやわらかく微笑んだ。

遠くの景色の見えるその頬が少しだけ赤らんだ、

それにより桜の花が少し濃くなるのが見えて、

それがとても綺麗に思えた。

って、何見てるんだよおれ…。

その笑顔を見た瞬間にいままで、

この子を…恐れていた自分が恥ずかしくなった。

そう思えるような、優しい顔をしていた。

この出会いは、もしかしたら

素晴らしいものなのかもしれない。そう思えた。




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