桜色交響曲8
 

 

~第二章清彦~1/4

 

 朝。起床。
今日もまた、怠惰な一日が始まるのか…。

面倒だ。

けれども、起きなくてはならないのであろうか?

このまま、頭痛やら腹痛を訴えて狸寝入りをする事も可能では?

そんな事をいくら考えても仕方のない事だ、それは痛いほどにわかりきっているのである。

このようにいつまでも、駄々をこねていても仕方がないではないか。

子供じゃあるまい。

こんな腑抜けた生活なんてものをしたいわけではない。
ならば何故、僕はこのようにしているのであろうか?

それは、至極簡単である。

鳴海清彦にとって、「通学」問う云う行為が、それほどまでに厭気の差す行為なのだ。

いや、僕だけではないであろう…。

僕のように、「虐め」という一種の社会問題にであっていれば、それは誰でも同じような境遇になるのでわないか?

まぁ、そんな事をいくら考えたところで、どうしようもないのであるが…。

まさか、自分がこのような惨状に陥るまで、「いじめられる奴には、それなりの過失がある」などと考えて居た。

しかし、いざそのような立場になってみると、こちらにはまったく非がないといった有様で、

まるで誰かを「虐める事」事態が社会の一部であり、それを行う事により…
まとまりをもとめているかのようである。

つまりは、誰か一人だけターゲットを決め、それを虐め抜く。

その虐めぬくという行為の中で、共感と仲間意識、
そして愉悦にひたっているのではないであろうか?

そう、思うと彼等の愚行にも納得がいく。
成程、彼等はそれほどまでに…。
あぁやめておこう、これ以上考えて居ても、仕方のないことであるし、
なによりも自分自身が同じ過ちを繰り返す事になるではないか。

それだけは避けたい。
あまりにも、情けないではないか。

「……彦……き……こ」

その声に、僕の瞑想は終了した。

「あ……。お母さん」

そう返答しながら、リビングへと赴いた。
 

「おはよう、清彦」

「えぇ、おはようございますお母さん」

「…ほら、早くご飯をたべて」

僕は、返事をしつつ、席に着いて咀嚼していた。

暫くすると、母が口にした。

「ねぇ、清彦…学校はどう?楽しい?」

「えっと……」

そんなものは、考えるまでもなく楽しくはないのである。

しかし、それをおいそれと真実を語れるわけもなく…。

そういう時は、楽しかった事を思い出すのである。

そうすれば、自分が憂鬱でいる事など相手には伝わらない。

まるで、学校の事で楽しいと実感しているかのように装えるからである。

そのような小細工は実の母には通用しないような、気がするが…
今の母をだます事は容易い。

そして、なによりも母にこれ以上の負担をかけたくないというのが、本音である。

「そう、なんだか…楽しいみたいね、安心したわ」

「うん、お母さんこそ……」

いってから、地雷を踏んだと気付くのだった。

今の母に対して、これ以上負担をかけるわけにはいかなかった。

だから、だます事に対しての抵抗はあまりなかったのである。

「……そ、そうね……そうよね」

「………えぇ」

せっかく、先ほど取り繕った意味がないではないか…。

「……そう、そう…なのよね」

「えぇ。今日は早めに帰宅しますから、早く帰るのがおしいくらいで…」

「そうよね、今日はレッスンの日だったわね…早く帰って……今日…は…」

不味いと思った。

この事に触れてはなら無かったと気付いても遅かった。

それから、母は一人でぶつぶつと何かを呟いていた。

僕は、それに対して何も出来ずに逃げるようにして家を飛び出したのである。
 
 
 
授業をうけていてもまったく身が入らない。学校とは、なんて退屈な空間なんだろうか。

別に学ぶ事が嫌いなわけじゃない。むしろ好きな方ではあるが、
この閉鎖空間を好きだと感じる事は、いかんせん不可能に近い。
また、そんな風な空想にふけっている。
そんな事をしても、仕方ないと思いながらも、結局は考えてしまう。

混沌とした、考えの繰り返しである。
僕の中に、渦巻いた空虚な思考。

考えれば考えるほどに、深みにはまっていく。

その邪念と云う名の泥沼に足をからめとられ、やがては意識の深く…とおちていくのである。

この空間に存在したくない。

どうして、ここの空気はこんなにまでも悪いのだろうか?
抜け出したい。

ここからにげてしまうのであれば、どんなに楽であろうか…。

そんな時は嫌な事ばかり思いだしてしまうのである。

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