数日前の話に遡る。
有言実行は難しい。
確りと計画性のある人間だったなら、今頭をかかるなんて事にはなっていない筈だ。
何が悪いって云うと、あれだ…。桜の一言が効いたんだ。
さらに遡ること数分前。
馬鹿みたいに泣きじゃくった後に、顔をあげて…。
その姿が、恥ずかしかったのもあるが、それ以上に格好良く見せたくて。
「俺…変わるよ。変わってみせる」
なんていったのも束の間。
『かわる…?』
「そう、俺…今のままじゃいけないと思うんだ…。なんだかは良く分かんないんだけど、それでも…変わろうと思う」
その言葉を聞いて、桜は静かに頷いた。
『うん…そっか……』
「……おれ頑張るよ」
『それでさ……何するの?』
その、さも当然な質問に俺は、困惑した。
「えっと……」
『拓也くん?』
「……あっははは」
計画も何も俺にはなかったから。それは当然の結果だった。志は高くても、なんの具体性もない事だったのだ。
それから、俺はずっと頭を抱えているのである。
自分を変える……か。言葉にするのは簡単でもとても難しい。何をすればいいのか、見当もつかなかった。
『じゃあ…拓也君は何がしたいの?』
「…それは」
『どうして、そう思ったの?』
「……えっと」
結局、なにもないのだ。気分だけは盛り上がっていて、何もないのだ。
まったく、俺馬鹿すぎる。
それでも、落ち着いてゆっくり考えれば何とかなる筈だ。
そう…俺がどうしてこう思ったか…それは。
脳裏によみがえるのは、健吾のあの言葉。「おまえには似合わないよ」軽率に放たれた言葉に俺は心底傷ついた。
そのことを思い出したとき、心に電撃が走った。
ある事が頭から離れない。それは、クラスに入って間もなくのこと。俺は見て見ぬふりをしたんだ…。
とても、軽い気持ちで。
俺は数日前に、不良に殴られているクラスメイトを目撃したことを思い出した。
あの言葉が、その思い出と混ざり合う。
そして、その事に痛みを感じるほど、その罪悪感は影を増していった。
俺も同じじゃないか…。
俺は、上辺だけで判断した。しかも、軽い気持ちで…それがどれほど人を傷つけるかようやく知ったんだ
「あいつだ…」
『あいつ?』
「そうだ…俺、もしかしたら…間違っていたかもしれない…そう気付いたんだ……」
『うん、それで?』
「あの…いつもは、気にしていなかった……」
『うん…うん』
「だけれども、俺の…してきた事は、奴らと変わらないんじゃないかって」
言葉にならない言葉が出てきた。
必死に思った事を云う。支離滅裂かもしれない、それでも俺の言葉だった。
桜が合槌をうってくれるのが分かって、なんだか沢山の事を話さなければならないかもしれないと思った。だから、さらに言葉は上手く出なかった。
『うん、それで?』
「だから………俺は、あいつを救いたい……」
『誰を?』
「それは……」
俺は、心から救いたいと思った奴の名前すらしらなかったんだ。
結局俺はタコ殴りにされていたあいつを救いたいと思いながらも、苛めているも同然だったのだ。
なんとも、情けないのである。