桜色交響曲10

 

~第二章清彦~3/4



数日前の話に遡る。

有言実行は難しい。今の俺に似合う言葉は、むしろ「本末転倒」である。

確りと計画性のある人間だったなら、今頭をかかるなんて事にはなっていない筈だ。

何が悪いって云うと、あれだ…。桜の一言が効いたんだ。

 

さらに遡ること数分前。

馬鹿みたいに泣きじゃくった後に、顔をあげて…。
その姿が、恥ずかしかったのもあるが、それ以上に格好良く見せたくて。

「俺…変わるよ。変わってみせる」

なんていったのも束の間。

『かわる…?』

「そう、俺…今のままじゃいけないと思うんだ…。なんだかは良く分かんないんだけど、それでも…変わろうと思う」

その言葉を聞いて、桜は静かに頷いた。

『うん…そっか……』

「……おれ頑張るよ」

『それでさ……何するの?』

その、さも当然な質問に俺は、困惑した。

「えっと……」

『拓也くん?』

「……あっははは」

計画も何も俺にはなかったから。それは当然の結果だった。志は高くても、なんの具体性もない事だったのだ。

 

 

 

それから、俺はずっと頭を抱えているのである。

自分を変える……か。言葉にするのは簡単でもとても難しい。何をすればいいのか、見当もつかなかった。

『じゃあ…拓也君は何がしたいの?』

「…それは」

『どうして、そう思ったの?

「……えっと」

結局、なにもないのだ。気分だけは盛り上がっていて、何もないのだ。

まったく、俺馬鹿すぎる。

それでも、落ち着いてゆっくり考えれば何とかなる筈だ。

そう…俺がどうしてこう思ったか…それは。

脳裏によみがえるのは、健吾のあの言葉。「おまえには似合わないよ」軽率に放たれた言葉に俺は心底傷ついた。

そのことを思い出したとき、心に電撃が走った。

ある事が頭から離れない。それは、クラスに入って間もなくのこと。俺は見て見ぬふりをしたんだ…。

とても、軽い気持ちで。

 

俺は数日前に、不良に殴られているクラスメイトを目撃したことを思い出した。

あの言葉が、その思い出と混ざり合う。

そして、その事に痛みを感じるほど、その罪悪感は影を増していった。

俺も同じじゃないか…。

俺は、上辺だけで判断した。しかも、軽い気持ちで…それがどれほど人を傷つけるかようやく知ったんだ

 

 

 

「あいつだ…」

『あいつ?』
「そうだ…俺、もしかしたら…間違っていたかもしれない…そう気付いたんだ……」

『うん、それで?』

「あの…いつもは、気にしていなかった……」

『うん…うん』

「だけれども、俺の…してきた事は、奴らと変わらないんじゃないかって」

言葉にならない言葉が出てきた。

必死に思った事を云う。支離滅裂かもしれない、それでも俺の言葉だった。

桜が合槌をうってくれるのが分かって、なんだか沢山の事を話さなければならないかもしれないと思った。だから、さらに言葉は上手く出なかった。

『うん、それで?』

「だから………俺は、あいつを救いたい……」

『誰を?』

「それは……」

俺は、心から救いたいと思った奴の名前すらしらなかったんだ。

結局俺はタコ殴りにされていたあいつを救いたいと思いながらも、苛めているも同然だったのだ。

なんとも、情けないのである。

 

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